背景事情
埼玉県川口市に住むHさん(70歳)は、長年一緒に暮らしてきた姉のAさん(享年80歳)が亡くなったことで相続の問題に直面しました。Aさんは生涯独身で子どももいませんでした。そのため、相続人にはHさんの兄と、長年疎遠になっていた甥や姪5名を含む合計7名が該当しました。
HさんとAさんは、父親と共に長年川口市の自宅で暮らしてきました。この自宅は、Aさんが3分の1、Hさんが3分の2を共有する形で所有しており、現在Hさんが1人で住んでいます。Hさんは「できればこの自宅は遺産分割の対象外にしたい」と考えていました。しかし、疎遠だった甥姪の意向が分からず、連絡先さえ知らない状況だったため、当事務所に相談されました。
解決のポイント
〇疎遠な甥姪5名の居場所を特定し、連絡を取ることができるのか。
〇自宅を遺産分割の対象外としたいが、それが可能なのか。
〇相続人の誰かが自宅を含めた財産分割を希望する場合、どのように評価するのか。
〇葬儀費用を相続財産から支出することについて、相続人全員の同意を得られるか。
当事務所の対応
まず、戸籍の附票を取得し、疎遠だった甥姪の居場所を特定しました。その後、手紙や電話を通じて相続手続きの必要性を伝え、話合いの場を持つよう努めました。次に、相続人の意思を明確にするため、以下の3つの選択肢を記載した意向確認書を作成しました。
1.すべての相続財産について法定相続分の相続を希望する
2.相続財産から自宅を除外し、自宅以外の財産のみを法定相続分で相続する
3.相続を希望しない
また、1.を選択する場合、不動産の評価額を比較的低い固定資産税評価額とすることに異議がないかも確認しました。
結果・お客様の声
意向確認の結果、兄と甥姪5名のうち、3名が「1.での相続」を希望し、3名が「2.での相続」を希望しました。最終的に遺産分割協議が成立し、自宅の評価についても固定資産税評価額を基準とすることで全員の合意を得ることができました。また、葬儀費用を相続財産から支出することについても全員の同意が得られました。
Hさんとしては、自宅が完全に遺産分割の対象外とはならなかったものの、3名の理解を得られたことで納得され、「自分たちではどうしようもなかったが、スムースに解決してくれて本当に助かった」との言葉をいただきました。
本件でも使用しましたが、疎遠な相続人がいるケースでは「意向確認書」で相続人全員の意向を確認することがあります。そして、Hさんのように被相続人と特別な関係があった相続人がいる場合は、財産目録と合わせてHさんの要望を記した文書を他の相続人に送った上で、「意向確認書」で意向の確認を行います。遺産分割協議は”相続人全員で協議する”ものですが、このように工夫することで疎遠な相続人間でも遺産分割協議は成立します。

相続でお困りの際は、ぜひご相談ください。