背景事情
相談者は東京都小金井市在住の82歳男性Mさんです。
「妹のAが亡くなりました。彼女には結婚歴も子どももなく、相続人は私と、すでに他界した兄弟の子どもたち(甥・姪)4名、そして兄の6名です。甥・姪たちとは連絡が取れましたが、問題は兄です。彼とは50年以上も音信不通で、親戚を頼っても彼の行方を知る者は一人もいませんでした。生きているのか、亡くなっているのかさえ分かりません。」
Aさんの財産は、不動産はなく預貯金400万円ほど。そのうちMさんは医療費や葬儀費用として約100万円を負担しており、相続財産から精算したいと考えていました。しかし、相続手続きを進めるには相続人全員の同意が必要。兄の所在が分からない以上、このままでは手続きが進められない状況でした。 「このままではどうにもならないと思い、司法書士の先生に相談することにしました。」
当事務所の対応
まず、Mさんの兄の戸籍を調査しました。しかし、戸籍の附票には、50年前に職権消除(行政が職権で住民票を削除すること)された記録があるだけで、現在の所在を突き止める手立てはありませんでした。
通常、このような場合は「不在者財産管理人の申立て」や「失踪宣告の申立て」を行う方法が考えられます。しかし、今回は相続財産が預貯金のみで金融機関も一つだったため、時間や手間のかかる裁判手続を避ける方法を模索しました。
金融機関と交渉し、「万が一、兄が後に現れた場合は他の相続人全員が責任を負う」という念書を差し入れることで、預貯金の解約を認めてもらいました。また、兄を除く相続人全員で「相続財産分配合意書」に捺印し、兄の法定相続分はMさんが預かる形で対応しました。
結果・お客様の声
Mさんからは次のお言葉をいただきました。
「兄については不在者財産管理人の申立てが必要と思っていましたが、裁判手続をすることなく預金の解約ができて良かったです。裁判手続となると時間と費用もかかりますので正直躊躇していました。先生に相談したことで、兄が見つからなくても手続を進める方法があると知り、本当に助かりました。ありがとうございました。」
この方法が正しいかどうかは分かりません。しかし、専門家は実務家として依頼者にとって最適なアドバイスを行うことが大切だと考えています。結果的には金融機関の解約手続を無事に終えることができ、行方不明の兄以外には相続財産を法定相続分どおりに分配することができました。Mさんにはお兄様の分配金はMさんが責任をもって管理してくださいとお伝えしています。

相続でお困りの際は、ぜひご相談ください。