相続手続には、思いもよらない問題が発生することがあります。今回ご相談を受けたKさんのケースもまさにその一例でした。
背景事情
Kさん(72歳)は、東京都千代田区にお住まいの男性です。伯母であるAさん(享年95歳)が亡くなられたため、相続手続を進めることになりました。Aさんは結婚歴がなく、子どももいないことから、相続人はKさんを含め、Aさんの亡き姉3名の子ども(甥・姪)7名と考えられていました。しかし、戸籍を取得して詳細を確認したところ、誰も認識していなかった「養子Bさん」の存在が明らかになったのです。BさんはAさんの母と養子縁組をしており、なんと107歳の超高齢。さらに戸籍には、Bさんがアメリカ・ユタ州で生まれたことが記載されていました。
ところが、親戚の誰もBさんのことを知らず、現在どこに住んでいるのか、そもそも生存しているのかさえも分かりませんでした。このままでは相続手続が滞ってしまう可能性があり、Kさんは当事務所にご相談されました。相続財産は、不動産はなく1500万円程度の預貯金のみでした。
解決のポイント
〇相続財産に不動産が含まれておらず預貯金のみであること。
〇Bさんの所在を調査し、存命かどうかを確認する。
〇相続手続を円滑に進めるための最適な方法を見つける。
当事務所の対応
このようなケースでは、徹底的な調査を行う一方で、時間がかかりすぎると相続人の負担が大きくなるため、現実的な解決策を模索する必要があります。そこで、以下の対応策を取ることにしました。
〇弁護士に依頼し、Bさんの居所を調査
弁護士に徹底的な調査を依頼し、結果を報告書としてまとめてもらいました。しかし、最終的にBさんの所在は判明しませんでした。
〇金融機関との交渉と念書の作成
万が一Bさんや関係者が後日現れた場合に備え、他の相続人全員で金融機関に対し「責任をもって対応し、金融機関には迷惑をかけない」旨の念書を提出しました。
〇相続財産分配合意書の作成
Bさんを除いた相続人全員で法定相続分に基づいた分配合意書を作成。その中で、Bさんの相続分相当額についてはKさんが責任を持って預かることとしました。
〇口座解約手続の実施
上記の書類を金融機関に提出し、通常より時間はかかったものの、無事に口座解約を完了しました。
結果・お客様の声
通常の相続手続と比べると時間を要しましたが、弁護士と連携し、金融機関とも調整を重ね、円滑に解決することができました。
Aさんからは、
「自分たちだけでは、Bさんの存在が分かった時点で途方に暮れていたと思います。最適な解決策を見つけ、無事に手続を終えられて本当に感謝しています。」
というお言葉をいただきました。
相続手続は思いがけない問題に直面することもあります。しかし、どのような状況でも最適な解決策を導き出すのが専門家の役割です。今回のように、現実的な解決手段を提案しながら、依頼者の負担を最小限に抑えることができたことを嬉しく思います。

相続でお困りの際は、ぜひご相談ください。