背景事情
東京都中野区で会社を経営するIさんは、創業者の相続問題に頭を抱えていました。
事の発端は3年前に急逝した創業者のAさん。IさんはAさんから事業を引き継ぎ、現在は代表取締役を務めています。しかし、Aさんが所有していた会社の株式は、いまだにAさん名義のまま。もともとはAさんの長男と話し合い、株式を譲り受ける予定でしたが、思わぬ事態が発生し、株式の問題が未解決のままとなっていました。
Aさんは創業者であり、長年経営を担ってきた人物です。しかし、体調を崩し、Iさんに経営を託して間もなく急逝しました。問題となったのは「株式の相続」でした。
会社の経営実態はIさんに引き継がれましたが、Aさんの株式は相続人が承継することになり、Iさんは正式な手続を経て株式を譲り受けるつもりでした。ところが、Aさんが会社から個人的に多額の借金をしていたことを知ったAさんの長男、二男、三男の3名は、相続によってこの負債を引き継ぎたくないと考え、家庭裁判所で正式に相続放棄をしました。これにより、Aさんの子どもたちは法律上「相続人ではない」という扱いになり、Iさんは誰と交渉すればいいのか分からない状態になってしまいました。
解決のポイント
株式に関する相続の手続が中途半端な状態では、会社経営にも支障が生じます。特に、以下の点が問題視されました。
〇金融機関からの融資の実行に影響
会社の財務状況を審査する際、株主の構成が不明確であることが問題視され、銀行から融資を受けることが難しくなりました。
〇取締役の変更・社名変更・本店移転等ができない
株主総会での決議が必要なため、株主が確定しないと重要な経営判断ができない状況に陥りました。
〇会社の株式が未整理のまま放置されると、将来的にさらなる相続問題を引き起こす可能性
株式の所有者が不明のままだと、さらに代を重ねたときに相続関係がより複雑になり、手続がより困難になる可能性がありました。
当事務所の対応
まずAさんの戸籍を収集し、相続人を特定することから始めたところ次の事実が判明しました。
〇長男・二男・三男はすでに相続放棄をしていた
第一順位の相続人がいないため、相続権はAさんの両親(第二順位)に移るが、すでに他界していた。
〇次に相続権が移るのはAさんの兄弟(第三順位)
Aさんには弟が2人いたが、Aさんの死後に2人とも亡くなっていた。通常であれば、ここで「相続人がいない」と判断されるケースもありますが、さらに調査を進めると意外な事実が判明しました。
〇Aさんの亡くなった弟2人は相続放棄をしていなかった
そのため、弟2人の相続人が結果的にAさんの相続権を引き継ぐことになった。
〇Aさんの弟2人は結婚歴はなく子どももいなかったため、亡くなっている兄Aさんの長男・二男・三男が代襲相続人になることが判明した。
つまり、Aさんの相続を放棄したはずの長男たちが、今度は「Aさんの弟の相続人」として、再びAさんの相続を承継することになってしまった。
これにより、相続放棄をしたはずの長男たちが、ブーメランのように相続人に戻るという予想外の事態が発生しました。
結果・お客様の声
想定外の事態に長男たちは困惑し、再び相続放棄を検討しましたが、Iさんの事情に理解を示し話い合いによる解決を選択しました。
話い合いの結果、会社がAさんに貸し付けていた貸付金を放棄することを条件に、長男たちがIさんに株式を無償で譲渡することで合意に至りました。
こうして、Iさんは無事に株式をすべて取得し、金融機関の融資も実行、社名変更や本店移転といった経営上の課題もクリアすることができました。
Iさんからは、こんな言葉をいただきました。
「まさかこんな形で長男たちに相続が戻ってくるとは思いもしませんでした。自分たちだけでは解決できず、どうしたらいいのか途方に暮れていましたが、最後まで粘り強く対応していただき、本当に感謝しています。」
相続手続は、一見シンプルに見えても、思わぬ形で問題が発生することがあります。今回のように、「放棄したはずの相続が復活する」というケースもあるため、慎重に手続を進める必要があります。相続放棄を受託する場合は次順位の相続人のケアを行うことも必要です。
また、この事例を通じて事業承継においては株式の移転を含めた計画が不可欠であることを改めて実感しました。事業承継・相続問題は早めに対処することで、余計なトラブルを防ぐことができます。

相続でお困りの際は、ぜひご相談ください。