背景事情
私は、知人の紹介で難病を患っているDさんの奥様から相談を受けました。Dさんは東京都台東区在住の64歳の男性で、筋委縮性側索硬化症(ALS)を患い、10年以上前から寝たきりの状態でした。手足を動かすことも、言葉を発することもできません。しかし、奥様の話では、意思はしっかりしており、訪問看護師の協力を得て『透明文字盤』を使いながら意思を伝えることが可能とのことでした。
Dさん夫婦には子供がいません。最も身近な存在である奥様は、彼を献身的に介護していました。Dさんは「自分の財産はすべて妻に遺したい」と強く望んでいました。しかし、遺言がないと、お母様や姉にも財産の一部が渡る可能性があり、Dさんは「母や姉とは疎遠なので、妻にすべてを遺したい」との思いを抱えていました。
そこで、私はDさんの遺言作成をサポートすることになりました。
当事務所の対応
まず私は、Dさんの意思能力が問題なく、適切にコミュニケーションが取れるかを確認するために、ご自宅を訪問しました。訪問看護師の方に協力をお願いし、『透明文字盤』を使いながらDさんとやり取りを行いました。その結果、Dさんの意思は明確であり、遺言作成のサポートを進めることができると判断しました。
次に、ALS患者の遺言作成に対応できる公証人を探す必要がありました。3つの公証役場に問い合わせたところ、対応可能な公証人が見つかり、看護師の方にも通訳として立ち会ってもらう了承を得ることができました。
Dさんの希望する遺言の内容は、
〇妻にすべての財産を相続させること。
〇妻を遺言執行者に指定すること。
というシンプルなものでした。その意向を尊重し、できるだけ短い文章で遺言文案をまとめて、公証人と連携しました。
結果・お客様の声
いよいよ公証人を交えて遺言を作成する日が訪れました。Dさんは透明文字盤を用いて意思を伝え、看護師の協力のもと、公正証書遺言を無事に作成することができました。
Dさんは「希望通りの遺言が作成できて安心した」と、満足そうな表情を浮かべていました。そして、奥様も「これで将来の不安がなくなった」とほっとされていました。
最後に、Dさんの奥様からいただいたお言葉をご紹介します。
「自分たちではどうすることもできず、不安ばかりでしたが、先生のおかげで納得のいく遺言を残すことができました。本当にありがとうございました。」
私自身、このようなケースを担当するのは初めてでしたが、意思能力さえあれば、法律上のサポートが可能であることを改めて実感しました。何より、Dさんと奥様の安心した表情を見ることができたことが、私にとっても大きな喜びでした。

相続でお困りの際は、ぜひご相談ください。