背景事情
今回ご相談いただいたのは、食品加工機械メーカーを経営していた創業者のSさん85歳と、その会社の経営を引き継がれた長女ご夫妻でした。
Sさんは10年前に会社の経営から退き、当時専務だった娘婿に経営を任せていましたが、会社株式は100%保有したままでした。
会社は創業以来の無借金経営で、毎年利益を出す優良企業です。Sさんは引退後も会社からの配当を楽しみにされており、その配当権利を手放すことに強い抵抗感がありました。一方で経営を譲り受けた長女ご夫妻は株式について何らかの対策が必要だと思っていましたが、Sさんは非常に頑固な性格で、自分が納得しない限り他人、特に身内の意見を受け入れないため、ご夫妻は困っていました。
特に、Sさんが高齢になり健康状態が不安定になってきたため、万が一判断能力が低下すれば株式の議決権行使ができなくなり、会社経営に大きな影響を及ぼす可能性があると危機感を強めていました。また相続が発生すると会社経営に無関係な二女にも株式が分散する可能性があり、このリスクへの対策が急務でした。
当事務所の対応
私はまず、Sさんとの信頼関係を築くことに専念しました。ご自宅を何度も訪問し、時には晩酌を交わしながら創業時の苦労話を伺うなど、丁寧に関係性を深めていきました。こうして信頼関係を築いた上で提案したのが、「配当を受け取る権利はそのままに、議決権のみを長女へ信託する」という家族信託の仕組みでした。Sさんの配当がなくならないことを丁寧に説明し、ご納得いただけました。
信頼を得てからのSさんは協力的で、資産の詳細なヒアリングもスムースに進み、総資産が約10億円あることも判明しました。その後、税理士と連携して相続税対策を含めた総合的な相続対策を策定し、諸対策を実行していくことになりました。
公証役場で家族信託契約を締結したことで、Sさんの判断能力が低下した場合でも会社経営が安定する体制が整い、長女ご夫婦も大変安心されていました。
お客様の声
Sさんからは、
「最初は家族信託など全く聞き慣れない話で、正直なところ気乗りしませんでした。しかし先生が熱心に何度も自宅に足を運んでくださり、丁寧に説明してくださったおかげで安心して任せようと思えました。配当がこれからも続くと聞いて本当にホッとしました。おかげで安心して過ごせます。ありがとうございました。」
また、長女ご夫婦からは、
「父はとても頑固で、私たちがいくら説明しても全く聞き入れてくれませんでしたが、先生が丁寧に、かつ根気強く説明してくださったおかげでようやく事業承継への道筋が見えました。父が先生を信頼してくれたことで、安心して今後の経営に専念できます。また、父の総財産もわかり全体の対策もお願いできるようになって本当に感謝しております。」
とのお言葉をいただきました。
事業承継はまず創業者と信頼関係を築くことが重要と考えています。いろんな意思決定は創業者しかできないからです。本ケースもまさに創業者との信頼関係がポイントでした。そして、急がず時間をかけることも大切だと考えています。本ケースではまず株式の配当を継続する前提で議決権行使について家族信託を活用し、その後、全体の相続対策の中で相続税対策、遺言作成、遺留分対策等を実行しました。根気強く依頼者との距離を縮めて懐に入り込むことが重要です。懐に入ってしまえばその後は諸々スムースにことが進みます。

相続でお困りの際は、ぜひご相談ください。