背景事情
ある日、東京都世田谷区にお住まいのKさん(60歳男性)から、祖母の相続についてご相談がありました。お話を伺うと、祖母Aさんは平成5年にお亡くなりになったとのこと。ところがその後30年以上もの間、相続手続きが行われず、そのままになっていたというのです。
きっかけは、最近亡くなられたKさんの父の遺品整理中に見つかった複数の通帳でした。それらはいずれも祖母名義のもので、「もしかして、祖母の相続手続きが終わっていなかったのでは…」と疑問を抱いたKさんは、相続人の範囲もまったく見当がつかず、不安を抱えてご相談にいらっしゃいました。
解決のポイント
本件では、以下のような多くの課題がありました。
- 相続開始から30年以上が経過していたことによる「休眠預金」の扱い
- 当時の相続人がすべて死亡しており、現時点の相続人はその承継人にあたる13名
- Kさんと他の相続人のほとんどとの関係がまったくなく、連絡先も不明
- 戸籍調査の労力と期間、さらに全員と連絡をとる難しさ
こうした点を踏まえ、Kさんからは「時間がかかってもいいので、きちんと調査して手続きを進めてほしい」と、全面的なご依頼をいただきました。
当事務所の対応
まず、祖母名義の預金について各金融機関に照会したところ、合計約700万円の預金が確認されました。30年以上経っており、いずれも休眠預金(※)扱いではありましたが、それぞれ解約は可能であることが分かりました。
並行して相続人調査を開始。戸籍を収集した結果、祖母には4人の子がいましたが、いずれも祖母死亡後に死亡。その子どもや配偶者をたどった結果、Kさんを含む13名が権利義務承継人として現在の相続人であることが判明しました。中には、Kさんが全く面識のない遠縁の方々が9名いらっしゃいました。
戸籍・除籍・改製原戸籍、附票などの取得通数は合計90通以上、当事務所としても過去に例を見ないほどの調査量でした。
住所地にお手紙を出し、返答を待ちながら、1名を除いて連絡が取れたのは約2か月後。残る1名は、従弟の方から連絡を取っていただくなど、周囲のご協力も得ながら、さらに2か月後に連絡がとれ、最終的には全員と接触することができました。
その後、全員が法定相続分での分割を希望されたため、遺産分割協議書を整え、署名・押印を経て、金融機関での解約・払い戻しを実施。依頼から10か月をかけて、すべての手続きが無事に完了しました。
お客様の声
Kさんからは次のお言葉をいただきました。
「祖母の相続が終わっていないことに気づいた時は、正直どうしていいか全く分かりませんでした。親戚の名前も住所も知らず、手紙を出すことすらできなかったので、自分たちではとても無理だったと思います。時間はかかりましたが、ひとつひとつ丁寧に進めていただいて、本当に感謝しています。」
本件は、相続開始から30年以上が経過し、当時の相続人がすべて亡くなった中で、その権利義務を承継した方々13名に連絡を取り、合意を得て預金を解約・分配するという、非常に難易度の高い案件でした。Kさんとは「ここまで複雑になるとは思わなかったけれど、お願いしてよかった」と何度も言葉を交わし、私たちとしても、地道な対応が実を結んだ案件として印象に残っています。
相続は、時間が経てば経つほど関係者が増え、手続きが困難になります。早めの対応の大切さを改めて感じさせられた事例でした。

相続でお困りの際は、ぜひご相談ください。