背景事情
「従兄が亡くなったんですが、相続人が誰もいないんです。」
最初にそうお話しいただいたのは、杉並区にお住まいのMさん(66歳・男性)でした。被相続人である従兄は独身で子どももなく、兄弟姉妹もおらず、ご両親もすでに他界されているとのこと。まさに相続人不存在の状態です。そんな中、被相続人が自筆証書遺言を遺しており、すべての財産をMさんに遺贈する旨が記されていました。財産はご自宅に加えて複数の収益不動産、預貯金など、総額5億円超。立派に財産を築かれた方だったようです。
当事務所の対応
不安と混乱の中で始まった相続手続き
遺言書があるとはいえ、自筆証書遺言は形式不備があれば無効になる可能性があります。また、記載が不明瞭な箇所や、遺言執行者の指定がない点も心配材料でした。
Mさんは、「この遺言で本当に相続できるのか」「金融機関や法務局はどう判断するのか」と、不安を抱えていらっしゃいました。私たちは、まず家庭裁判所での遺言書の検認手続きからご案内し、遺言執行者の選任申立てへと進めました。執行者にはMさんご本人を推薦し、無事選任された後、当職が遺言執行実務のサポートを行いました。
最大の壁は金融機関の対応
遺言に記載された金融機関は5つ。中には、遺言に明示されていない口座や、大手銀行による慎重すぎる対応もあり、検認済みの遺言書を提出しても、「この自筆証書遺言では解約は難しい」と言われる場面もありました。
しかし、私たちは他行の受理実績や、遺言内容の補足説明、法律上の根拠を丁寧に示しながら、粘り強く交渉を重ねました。その結果、全ての金融機関において無事に解約を完了することができました。不動産についても、事前に法務局に照会をかけたうえで、スムースに遺贈を原因とする名義変更の登記を行うことができました。
※参考記事「自筆証書遺言作成の注意点と公正証書遺言との違いを徹底解説?」
お客様の声
「相続人がいない中で、従兄の遺志をきちんと実現できるか本当に不安でした。司法書士の先生が一つひとつ手続きを丁寧に説明してくれて、金融機関とも粘り強く交渉してくださったおかげで、滞りなく全ての手続きを終えることができました。」
「不動産の登記や銀行口座の解約など、私たちではとても対応できなかったと思います。本当にありがとうございました。」
今回のように自筆証書遺言は形式要件を満たしていても、内容の記載が曖昧であったり、金融機関ごとに対応が異なるため、実際に相続手続きができない可能性があります。被相続人の「想い」を形にするには、ただ遺言を残すだけでなく、それを実現するための準備とサポートが必要不可欠だということを、今回の件を通じて改めて感じました。
当事務所では自筆証書遺言作成のサポートも承っておりますので、ぜひご相談ください。

相続でお困りの際は、ぜひご相談ください。