背景事情
私のもとにご相談に来られたのは、杉並区にお住まいの50歳のKさん(女性)でした。亡くなられたお父さまの相続について、もう一人の相続人であるお姉さまとの間で、どうしても冷静な話し合いができないため、第三者に間に入ってほしいというご希望でした。
お話を伺うと、Kさんはご結婚後もご実家の近くに住み続け、両親の介護や身の回りの世話を一手に担ってこられたとのことでした。五年前にお母さまが亡くなった際にも、葬儀やその後の諸手続きをすべて担い、今回のお父さまについても、最期まで寄り添って看取られました。
一方の長女であるお姉さまは、結婚後ご主人の仕事の関係で大阪へ転居され、両親との交流は次第に薄れていったそうです。さらに、七年前にはお姉さまの子供の大学進学に際し、お父さまから300万円の贈与を受けていたことも判明しました。
Kさんとしては、これまでの介護や事務負担を「寄与分相当」として考慮してほしいという思いがありました。とはいえ、お姉さまとは普段のやりとりは問題なくできるものの、「相続」というお金に関わる話題になると感情的になり、冷静な協議が難しくなる——そのため、第三者として私にご依頼いただいたのです。
当事務所の対応
財産調査と特別受益・寄与分の整理
課税案件なので、税理士と連携して財産調査を行い、金融資産7000万円ほどの相続財産の内容を確定しました。同時に、Kさんがこれまで支払ってこられた葬儀費用、行政手続関係費用、墓じまい費用、法要費用などを一覧化し、Kさんの要望もあり税務上控除できない費用についても、相続財産から精算できるよう整理しました。
また、お姉さまからは生前贈与300万円の内容を確認し、特別受益に該当することを明確にしました。さらに、Kさんには介護の実態を詳しくヒアリングし、寄与分相当の内容を具体的に記載した文書を作成しました。 Kさんのご希望は「寄与分を考慮して、500万円ほど多く相続したい」というものでした。
冷静な話し合いの場を整える
財産目録と法定相続分を前提とした税負担のシミュレーション資料を作成し、お姉さまに事前共有した上で、リモート面談を設定しました。当日はKさんにもご同席いただき、私から客観的な状況説明を行ったうえで、Kさんの希望を丁寧にお伝えしました。
感情的になりがちなやり取りも、第三者が間に入ると不思議と冷静さが保たれ、双方の意見をフラットに並べることができます。お姉さまも資料を基に状況を整理されたのか、「妹に任せきりだったのは事実」「生前贈与も含めて調整は必要」と、穏やかに話し合いを進めてくださいました。
結果とその後
最終的に、お姉さまは生前贈与300万円を特別受益として持ち戻すこと、そして寄与分としてKさんが500万円多く相続することに同意されました。こうして双方納得のいく形で遺産分割協議が成立し、相続手続は滞りなく完了しました。
お客様の声
「自分ではとても整理できず、姉ともうまく話ができませんでした。先生に間に入っていただいたおかげで、お互い冷静に話し合うことができ、納得のいく形で父の相続を終えることができました。本当にありがとうございました。」
特別受益や寄与分が複雑に絡む案件は、当事者だけではどうしても感情が先行しやすく、話し合いが難航しがちです。しかし、第三者が入ることで両者が落ち着いて向き合うことができ、今回のようにスムースな解決につながることもあります。
※参考記事① 特別受益・寄与分とは?初心者にもわかりやすく仕組みと遺産分割への影響を解説
相続でお困りの際は、ぜひご相談ください。