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相続における失踪宣告とは?不在者財産管理人との違いや手続きの判断基準を解説

  • 投稿:2025年07月13日
  • 更新:2025年07月14日
相続における失踪宣告とは?不在者財産管理人との違いや手続きの判断基準を解説

相続手続きの中でも特殊なケースとなる「失踪宣告」。行方不明者がいる状態では遺産分割協議ができないため、手続きを進めるには「失踪宣告」または「不在者財産管理人の選任」が必要になります。この記事では、初心者にも分かりやすく、それぞれの制度の違いや選択の判断基準、そして失踪宣告が持つ法律的な意味について詳しく解説します。

失踪宣告とは何か? 行方不明者と相続の問題

相続において、相続人の中に長期間行方が分からない人がいる場合、遺産分割協議を進めることができなくなります。法律上、すべての相続人が揃って協議を行う必要があるため、1人でも不在であると手続きが停止してしまうのです。

このようなケースにおいて利用される制度の一つが「失踪宣告」です。失踪宣告は、一定の条件を満たすことで行方不明者を法律上「死亡した」とみなす制度であり、これによって遺産分割協議を再開することが可能になります。 行方不明の家族に対して「死亡」とみなす決定を下すのは非常に重い判断ですが、長期間にわたり生死不明の状態が続くことで、残された家族の生活や手続きに大きな支障が生じてしまうため、法律はそのような救済措置を設けています。

不在者財産管理人の選任とは? 不在者の財産を守る制度

行方不明者がいる場合、すぐに失踪宣告を申し立てるのではなく、まずは「不在者財産管理人」の選任を検討することがあります。不在者財産管理人とは、行方不明となっている人の財産を適切に保護・管理するために、家庭裁判所が選任する人物のことです。

この制度は、行方不明者が生存している可能性がある場合や、失踪宣告を行うには期間が足りないといった事情があるときに利用されます。不在者財産管理人が選任されると、その人が行方不明者の代理として遺産分割協議に参加することも可能になります。 ただし、代理としての参加には家庭裁判所の許可が必要であり、一定の条件を満たす必要があります。また、この制度は一時的な措置であり、根本的な解決にはなりません。そのため、状況によっては後に失踪宣告を申し立てることも検討されることになります。

どちらを選ぶべきか? 判断の基準

失踪の期間と今後の見込みがカギ

不在者財産管理人の選任を行うべきか、それとも失踪宣告を申し立てるべきか。この判断は、主に行方不明となっている期間と、その人が見つかる可能性の有無に左右されます。

一般的に、失踪宣告を申し立てるには少なくとも7年間、行方不明の状態が続いている必要があります。災害や事故など、生命に関わる危機に直面した状況であれば、1年という短期間でも失踪宣告が可能ですが、通常の失踪であれば原則として7年の期間が必要です。

これに対し、不在者財産管理人は失踪期間の長短に関係なく申し立てができるため、失踪から時間が経っていないケースや、生存の可能性が高い場合にはこちらが選ばれる傾向があります。 判断に迷う場合は、家庭裁判所や弁護士などの専門家に相談し、状況に応じた最適な手続きを選ぶことが重要です。法的な手続きを急ぐ気持ちがあっても、家族の気持ちや今後の生活に与える影響も考慮する必要があります。

失踪宣告の効果と注意点

法的には死亡、でも心情には配慮を

失踪宣告が家庭裁判所によって認められると、その行方不明者は法律上「死亡した」とみなされます。この法的効果によって、その人を含めた相続人の構成が確定し、遺産分割協議を正式に進めることが可能となります。

しかし、失踪宣告には感情的な側面も無視できません。たとえ長年行方不明であっても、家族にとってはまだ「生きているかもしれない」という希望がある場合もあります。そうした中で、その人を「亡くなった」と法律的に扱うことは、家族にとって重い決断となります。

また、失踪宣告が認められた後に当人が生存していたことが判明した場合、宣告は取り消されます。ただし、一度行われた遺産分割などの法的効果については原則として取り消されないため、複雑な状況になることも考えられます。 そのため、失踪宣告の手続きを行う際には、法的な面だけでなく、家族の気持ちや今後起こり得る可能性についても十分に考慮した上で慎重に進める必要があります。

失踪宣告の手続きの流れ

失踪宣告を申し立てるには、まず家庭裁判所に対して申立てを行います。申立てを行えるのは、配偶者や親族など、その人の法律上の利害関係者です。申立書には、失踪者の氏名・生年月日・最後に確認された日付などを記載し、行方不明の状況を示す資料を添付する必要があります。

提出後、家庭裁判所は申立ての内容を審査し、公示催告と呼ばれる公告手続きを行います。これは、一定期間内に失踪者本人またはその情報を持つ人が名乗り出る機会を与えるための措置で、通常は官報に公告されます。

公告期間が満了しても本人の所在が明らかにならない場合、裁判所は失踪宣告を決定し、これにより法律上の「死亡」としての効果が発生します。失踪宣告が確定すれば、相続が開始され、遺産分割協議を進めることができるようになります。

申立てから宣告までの期間

失踪宣告の申立てから実際に宣告がなされるまでの期間は、状況によって異なりますが、一般的には7か月から1年程度かかることが多いです。これは、家庭裁判所が申立てを受理した後、公示催告の手続きを行うため、一定の公告期間が必要になるからです。

特に、公示催告期間は法律上「6か月以上」と定められており、失踪者本人がその間に名乗り出る機会を与えるための重要な期間とされています。この期間中に何の反応もなければ、裁判所は事実上の死亡と判断し、失踪宣告を決定します。 したがって、申立て後すぐに結果が出るわけではなく、一定の時間が必要となることを理解しておくことが大切です。

まとめ

相続において、相続人の一人が長期間行方不明である場合、手続きは大きく滞ってしまいます。こうした場合に検討されるのが、「不在者財産管理人の選任」か「失踪宣告」のいずれかの手続きです。

不在者財産管理人の制度は、生存の可能性がある段階で財産の保護や手続きを一時的に進めるための制度であり、失踪宣告は法律上その人を死亡とみなすことで、相続を本格的に進めるための制度です。

失踪宣告が認められれば、相続人の構成が確定し、遺産分割協議を正式に行うことが可能になります。しかし、そこに至るまでには法的な審査と感情的な葛藤が伴うため、どちらの手続きを選ぶべきかは状況を冷静に見極める必要があります。 申立てから宣告までの期間や、公告の手続きなども含めて、時間と手間のかかる制度であることを理解し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることが望ましいでしょう。

    よくある質問

    ○失踪宣告の申立てから完了までにどのくらい時間がかかりますか?
    公示催告期間を含め、通常は7か月から1年ほどかかることが多いです。裁判所の手続き状況や必要書類の不備などにより、さらに長引くこともありますので、早めの準備が重要です。

    ○失踪宣告後に本人が戻ってきた場合はどうなりますか?
    本人が生存していたことが判明した場合、失踪宣告は取り消されます。ただし、その間に行われた相続などの法律行為は原則として有効なままとなります。場合によっては複雑な法律問題に発展することもあります。

    ○家庭裁判所への申立てに必要な書類は何ですか?
    主に申立書、失踪者の戸籍謄本、住民票の除票、失踪状況を示す資料(警察の捜索記録や目撃情報など)が必要です。個別のケースによって異なるため、事前に裁判所や専門家に確認することをおすすめします。

    ○失踪宣告をすると遺産分割協議は進められますか?
    失踪宣告が確定すれば、失踪者は法律上死亡したとみなされるため、相続人の構成が明確になり、遺産分割協議を正式に進めることが可能になります。ただし、手続きの進行には確定通知を待つ必要があります。

    ○失踪宣告の効果にはどのようなものがありますか?
    失踪宣告の最大の効果は、当該人物が法律上死亡と扱われることです。これにより、相続が開始され、婚姻関係の終了や戸籍上の記載にも影響が出ます。

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