
司法書士
藤川健司
司法書士事務所 リーガル・アソシエイツの代表司法書士。三鷹市、武蔵野市、調布市、杉並区、中野区を中心に相続専門の司法書士事務所として、相続全般のサービスを提供。業務歴30年以上。弁護士事務所での実務経験、起業経験を活かして、これまでに2000件以上の相続案件を手掛ける。
CONTENTS
「亡父・亡母との関係を断ち切りたい」「DVや家庭の事情で関わりたくない」――そんな悩みを抱える方に向けて、本記事では相続放棄によって一切の関係を法的に断つ方法をわかりやすく解説します。警察からの連絡対応、遺品整理の回避方法、行政や親族からの連絡への対応、そして相続放棄の正しい手続きまで、初心者にも安心して読める内容です。遺産相続に巻き込まれず、穏やかな日常を守るために、今すぐ知っておくべき情報をまとめました。
目次
突然、亡くなった父母について警察から連絡が来た場合、動揺するのは当然のことです。しかし、父母との関係を断ち切りたいと考えている場合は、初動での対応がとても重要です。まず最初に伝えるべきなのは「相続放棄をする予定である」という意思です。
警察からは、遺体の引き取りや所持品の受け取りを求められることがありますが、これらは法的な義務ではありません。相続放棄を前提としていることをはっきり伝えることで、関係機関とのやり取りを最小限に抑えることが可能です。相手が強く求めてくる場合でも、「家庭裁判所で相続放棄の手続きを進める予定である」と伝えれば、法的にも正当な対応と認められます。 故人と縁を切りたいという気持ちは、決して後ろめたく感じる必要はありません。自分自身を守るためにも、毅然とした態度で、最初から関わりを拒否することが大切です。
相続放棄をする意思がある場合、故人の埋葬や遺品の処理についても、関わる義務は基本的にありません。一般に、遺体の埋葬や火葬は「親族」の協力が求められる場面がありますが、これは法的な強制力を持つものではなく、実務上の慣習にすぎません。
実際には、身寄りのない人が亡くなった場合、自治体が「行旅病人及行旅死亡人取扱法」に基づき、遺体を火葬し、所持品を保管または処分します。このため、たとえ血縁関係があっても、関与を望まないのであれば、無理に埋葬や遺品整理に応じる必要はないのです。 遺品についても、相続放棄を行う意思を示した時点で、それを「受け取る」「持ち帰る」といった行為は慎重に避けるべきです。なぜなら、それらの行為が相続の「単純承認」と見なされるおそれがあるからです。警察や行政から要請があっても、毅然と断り、すべての手続きは放棄の意志を前提に対応することが重要です。
相続放棄とは、法定相続人であっても財産や負債の一切を引き継がないという意思を、家庭裁判所に正式に申述する手続きです。この制度は、故人と関わりたくない、負債を背負いたくないという人のために設けられています。相続放棄をすることで、法律上その人は最初から相続人でなかったものと見なされます。
この手続きには明確な期限があります。原則として、故人の死亡を知った日から3か月以内に、家庭裁判所へ申述書を提出しなければなりません。この期間を「熟慮期間」と呼びますが、3か月を過ぎてしまうと、自動的に「単純承認」と見なされる可能性があるため、注意が必要です。
申述は、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。必要書類としては、相続放棄申述書のほか、故人の除籍謄本や自分の戸籍謄本などが求められます。書類の準備や提出には一定の時間がかかるため、できるだけ早く動き出すことが肝心です。 一度相続放棄が受理されれば、その後は遺産の取得だけでなく、遺品整理や葬儀、その他の行政的な手続きへの関与も原則として不要となります。
相続放棄が正式に認められた場合、相続人としての立場を完全に失うため、遺産の分配や負債の支払いはもちろん、遺体の引き取りや葬儀への出席、遺品整理なども法的に求められることはありません。つまり、相続放棄をすることで、亡父母との一切の関係を法律上断ち切ることができます。
ただし、注意すべきは、相続放棄の意思を伝えた「だけ」では不十分だという点です。家庭裁判所に正式な申述が受理されるまでは、第三者から見て相続人として扱われる可能性があるため、それまでは財産や遺品に手を触れない、連絡に対しては放棄予定であることを繰り返し伝える、といった慎重な姿勢が必要です。
また、警察や行政、病院などから依頼や連絡が来ることはありますが、相続放棄をする意志があることを明言し、法的義務がない限りは一貫して関与を拒むことが可能です。関係機関もこの点は理解しており、強制的に関与させることはできません。 大切なのは、自分の法的立場を理解し、安易に対応せず、正式な手続きを踏むことです。相続放棄が認められたあとは、誰にも責められることなく、安心して故人との関係を断ち切ることができます。
相続放棄を正式に終えた後も、行政機関や親族から連絡が来ることはあり得ます。しかし、法的には相続人ではなくなっているため、以後の連絡に応じる義務はありません。特に故人との関係が悪かった場合、連絡を受けること自体が大きなストレスとなるため、毅然とした対応が必要です。
行政機関からの問い合わせに対しては、「相続放棄済みである」ことを明確に伝えましょう。すでに受理された家庭裁判所の通知書(相続放棄受理通知書)を提示すれば、法的にも相続人でないことが証明され、それ以上の関与を求められることは基本的にありません。
一方、親族からの連絡には、感情的なやり取りが含まれることも少なくありません。遺品整理や葬儀費用の分担を求められるケースもありますが、相続放棄を済ませていれば、その義務は発生しません。冷静かつ丁寧に「すでに放棄しており、法的には関わる立場にない」と伝えることが大切です。 必要に応じて、弁護士に間に入ってもらうことも一つの方法です。相手との直接のやりとりを避け、自分の精神的負担を軽減する手段として有効です。相続放棄後は、関係を一切断つ権利があることを理解し、自分を守る対応を心がけましょう。
亡父母との関係を断ち切りたいという思いは、決して特別なことではありません。深い傷や過去の事情を抱えた中で、相続問題に巻き込まれるのは大きな負担です。そんな中で有効なのが「相続放棄」という制度です。
警察や行政、親族から連絡があっても、相続放棄を前提として対応すれば、無理に関わる必要はありません。遺体の引き取りや遺品整理といった負担の大きい作業も、法的には拒否することが可能です。
相続放棄の手続きは家庭裁判所で行い、期限内に正しく進めることが重要です。一度放棄が受理されれば、相続人としての義務も権利も一切失われます。必要に応じて専門家のサポートを受けることで、精神的にも法的にも安心して進められるでしょう。 相続放棄は、過去と決別し、自分自身の人生を守るための選択です。手続きを通して、穏やかな日常を取り戻す一歩を踏み出してください。
○相続放棄をしても警察からの連絡には応じる必要がありますか?
相続放棄の意思を明確に伝えれば、遺体の引き取りや所持品の受け取りといった要請には応じる必要はありません。法的な義務はなく、警察もそれを理解しています。
○相続放棄をするにはどこで手続きを行いますか?
家庭裁判所で行います。亡くなった方の最後の住所地を管轄する裁判所に申述書を提出する必要があります。
○遺品整理を断っても問題ないのでしょうか?
相続放棄をしていれば、遺品整理に関与する義務はありません。遺品に触れることで相続したと見なされる可能性があるため、関与しない方が安全です。
○相続放棄には期限がありますか?
あります。原則として、被相続人の死亡を知った日から3か月以内に手続きを完了させる必要があります。
○相続放棄をすると次に誰が相続人になりますか?また、その人に連絡すべきですか?
相続放棄をすると、法律上の次順位の相続人(通常は兄弟姉妹や祖父母など)に相続権が移ります。ただし、相続放棄をした本人に次順位の相続人への連絡義務はありません。行政や家庭裁判所の手続きの中で、必要に応じて次順位の相続人が把握されます。精神的・物理的な負担を避けたい場合は、あえて自分から連絡を取らなくても問題ありません。
○行政からの手続き依頼はすべて拒否できるのですか?
法的に相続人でなくなった後は、基本的にすべての手続きを拒否することが可能です。相続放棄が受理された証明書を提示することで、対応を免れることができます。
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