背景事情
今回ご相談くださったのは、東京都杉並区にお住まいの85歳の女性Wさんでした。
亡くなられたのは、彼女の妹様(享年75歳)。生涯独身で子どももおらず、相続人は兄弟姉妹4人でしたが、存命だったのは相談者お一人で、他の3人はすでに亡くなっていました。そのため、代襲相続により甥や姪10名が相続人となり、合計で11名が関係する複雑な相続となりました。しかも、甥や姪の多くは遠方に住んでおり、長年音信不通。
「誰がどこに住んでいるのかも分からない」とのことで、ご自身で手続きを進めるのは難しい状況でした。
相続財産は預貯金が約2,000万円。相談者は葬儀費用や医療費など約350万円を自分の資金で支払っており、相続財産から精算したいという希望をお持ちでした。
当事務所の対応
相続人の確定と連絡開始
まず取り組んだのは、相続人の確定です。戸籍をたどると、被相続人の
・亡兄(長男)の子どもが6人
・亡姉(長女)の子どもが1人
・亡兄(二男)の子どもが3人
合計10名の甥姪がいることが分かりました。 また、取り寄せた戸籍の附票をもとに現住所を確認し、全国各地の相続人へお手紙を出しました。
「おば様のご相続についてご相談させてください」という丁寧な文面にし、信頼を得られるよう心掛けました。全員と連絡が取れるまでに2か月を要しました。
意向確認と合意形成
財産目録を作成して全員に郵送し、相続の意向を確認しました。
結果として、長男の子ども6名のうち3名が「自分は相続を希望しない」との意向を示し、その相続分を自分たちの兄弟姉妹へそれぞれ等分に譲渡することになりました。
残る相続人は全員法定相続分での相続を希望され、葬儀費用や医療費については相談者が支払った分を相続財産から支出することに全員が同意してくれました。 その後、私は相続分譲渡証書と遺産分割協議書を作成。それぞれの方に署名・押印をお願いし、完了書類を順次回収しました。
手紙のやり取りや電話連絡を重ねながら、8か月かけて全員の同意を取りまとめました。
丁寧な説明が信頼につながった
相続人の方々の中には、「自分は関係ない」「手続きが難しそう」といった不安を口にする方もおられました。
しかし、なぜ相続人になるのか、どんな書類が必要なのかを一つひとつ丁寧に説明することで、理解と協力を得ることができました。 最終的に、預金の解約・分配も無事に終わり、相続人全員が納得する形で手続きが完了しました。
全国に散らばる11人の相続人をつなぎ、8か月にわたるやり取りを経て、ようやくゴールを迎えることができました。
お客様の声
「甥や姪の住所も分からず、どうしていいのか全く見当がつきませんでした。
先生が一人ひとりに丁寧に手紙を出し、電話で説明してくださり、最後まで諦めずにまとめてくださいました。私一人ではとてもできなかったと思います。本当にありがとうございました。」
ご高齢の方が、疎遠な親族を含む多人数の相続を自力で進めるのは大変なことです。戸籍調査・文書作成・意向確認などを専門家が代わりに行うことで、円滑な解決が可能になります。
※参考記事① 相続における葬儀費用の扱いについて法的・税務的な観点から分かり易く解説
※参考記事② 相続しない方法は3つある?家庭裁判所への手続きとの違いもわかりやすく解説
相続でお困りの際は、ぜひご相談ください。