
司法書士
藤川健司
司法書士事務所 リーガル・アソシエイツの代表司法書士。三鷹市、武蔵野市、調布市、杉並区、中野区を中心に相続専門の司法書士事務所として、相続全般のサービスを提供。業務歴30年以上。弁護士事務所での実務経験、起業経験を活かして、これまでに2000件以上の相続案件を手掛ける。
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相続手続きは日本国内でも複雑な作業を伴いますが、相続人の中に外国籍の方が含まれる場合にはさらに手続きが煩雑になる傾向があります。特に、被相続人が日本人であっても、相続人にフィリピン国籍の家族がいるようなケースでは、日本の民法の規定に基づき相続が行われる一方で、戸籍制度の違いや書類の取得方法の違いにより、現実的な手続きに多くの障壁が生じることがあります。
この記事では、相続人が外国籍である場合に日本での相続手続きがどう進められるのかについて、一般の方でも理解できるように解説していきます。特に、フィリピン国籍の相続人がいる場合を中心に、相続権の基本から必要書類、手続きの流れ、注意点まで、実際に役立つ情報を詳しくご紹介します。
目次
日本の法律では、被相続人が日本国籍であれば、その相続手続きには日本の民法が適用されます。これは、相続に関する準拠法を定めた国際私法のルールに基づくもので、被相続人の本国法が優先されるという原則に従っています。したがって、相続人がどこの国籍であっても、被相続人が日本人である以上、その相続には日本の民法が適用されることになります。
日本の民法においては、相続人の国籍によって相続権が制限されることはありません。したがって、相続人がフィリピン国籍であっても、日本人の相続人と同様に法定相続分が与えられます。重要なのは、外国籍であっても相続権が認められるだけでなく、その権利を実際に行使するために、相続人自身が自分の身分や相続関係を証明する書類を揃え、日本の制度に則って手続きを進めなければならないという点です。
日本では戸籍制度により、家族関係や身分事項を公的に証明することが可能です。相続手続きにおいても、この戸籍をもとに被相続人と相続人の関係を確認するのが基本となっています。しかし、フィリピンをはじめとする多くの国々には日本のような戸籍制度がなく、家族関係の証明に別の方法を取る必要があります。
フィリピンでは「出生証明書(Birth Certificate)」や「婚姻証明書(Marriage Certificate)」といった個別の公的書類で身分関係を証明するのが一般的です。これらの書類はフィリピン統計庁(PSA)などから取得できますが、日本の相続手続きに使用する場合は、公証人の認証や日本大使館での領事認証、さらには日本語訳の添付が求められることもあります。 このように、戸籍が存在しない国からの証明書は、そのままでは日本の金融機関や法務局で通用しないことが多いため、提出前に適切な認証と翻訳を行うことが不可欠です。特に翻訳の正確さや認証の形式に関しては、事前に提出先に確認しておくことがトラブル回避の鍵となります。
外国籍の相続人が日本で相続手続きを行う際には、通常の相続書類に加えて、外国に居住する相続人ならではの追加書類が必要となります。まず基本となるのは、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本、遺言書がある場合はその写し、相続関係を示す図(いわゆる相続関係説明図)などです。これに加え、外国籍相続人がその地位を証明するための書類として、出生証明書やパスポートの写し、婚姻証明書などが求められます。
これらの書類は、たとえばフィリピンの場合であればフィリピン統計庁(PSA)から取り寄せることができます。郵送での請求やオンラインでの申請が可能な場合もありますが、日本で使用するためには通常、現地での公証や日本大使館での認証、さらに日本語訳が添えられていることが条件となる場合があります。
また、金融機関で預金の解約手続きを行う際や、不動産の名義変更を申請する際には、相続人全員の署名・押印が必要です。そのため、外国籍相続人には署名証明書や印鑑証明書に相当する書類を準備してもらう必要があります。フィリピンでは「署名証明書(Certificate of Acknowledgement)」が日本の印鑑証明の代替として使用されることが多く、これは日本大使館や領事館で発行してもらうことができます。 このように、必要な書類は多岐にわたり、国ごとの制度に応じた対応が必要になります。相続手続きを円滑に進めるには、各機関が求める書類の内容や取得方法を事前に確認し、余裕を持った準備を行うことが大切です。
外国籍の相続人が関わる相続手続きは、単に法律の知識だけでなく、各国の制度や書類の形式、翻訳や認証の方法など、多岐にわたる知識と対応力が求められます。とくにフィリピンのように日本とは制度の違いが大きい国の場合、正しい書類を揃えるだけでも一苦労です。また、日本の金融機関や法務局によっては、外国語の書類に対して厳格な対応を求めることもあり、個人で手続きを進めるには限界があることも珍しくありません。
こうした背景から、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に相談することは非常に有効です。これらの専門家は、相続手続きに精通しているだけでなく、外国の制度や書類に関する経験も持っている場合が多く、書類の準備や翻訳、認証の手配などを一括でサポートしてくれます。さらに、万一のトラブルや書類の不備にも迅速に対応できる体制が整っているため、安心して手続きを進めることができます。 相続は人生の中でも重要なライフイベントの一つであり、手続きにミスがあると、将来的に大きな問題へと発展する可能性もあります。特に国際的な要素が関わる場合には、早い段階で専門家に相談し、正確かつスムーズに相続を完了させることが、何よりも大切です。
外国籍の相続人がいる場合でも、被相続人が日本人であれば日本の民法が適用され、基本的には日本人の相続人と同様に相続権が認められます。ただし、フィリピンのように戸籍制度が存在しない国の相続人については、身分関係の証明に必要な書類が異なり、その取得や認証、日本語訳の準備といった手間が発生します。
金融機関での解約手続きや不動産登記においても、日本の制度に則った形式が求められるため、書類の不備や形式の違いには注意が必要です。そのため、手続きを円滑に進めるには、相続人本人が早めに必要書類を集めることに加え、制度や書式に詳しい専門家に相談することが重要です。 国際的な相続は、日本国内の相続に比べて複雑になりがちですが、事前に正しい情報を把握し、的確な準備を行うことで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。安心して相続手続きを進めるためにも、信頼できる専門家のサポートを活用することをおすすめします。
〇外国籍の相続人でも相続放棄はできますか?
外国籍の相続人でも、日本の民法に基づいて相続放棄を行うことが可能です。ただし、相続放棄の申述は日本の家庭裁判所に対して行う必要があり、その際には本人確認書類や翻訳書類、署名証明書などが必要になります。提出期限(原則3か月以内)もあるため、早めの準備が求められます。
〇フィリピンで発行された書類はそのまま日本で使えますか?
フィリピンで発行された出生証明書や婚姻証明書などは、日本で相続手続きに使う場合、現地での公証に加えて日本大使館での領事認証が必要です。また、日本語訳を添える必要もあります。手続き前に日本側の受け入れ機関に確認することをおすすめします。
〇海外居住者でも日本の相続手続きに参加できますか?
はい、海外に住んでいても日本の相続手続きには参加できます。必要に応じて郵送で書類を取り交わしたり、現地の日本大使館で署名証明書を取得したりすることで、手続きに支障はありません。ただし、時間がかかることがあるため、早めの準備が重要です。
〇公証人の認証とは何ですか?なぜ必要なのですか?
公証人の認証とは、提出書類が正規に発行されたものであることを証明するための手続きです。フィリピンなど外国の書類を日本で使用する際、日本の機関が書類の真正性を判断するのが難しいため、公証を通じて信頼性を担保する必要があります。
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