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遺言の「予備的条項」とは何か?

  • 投稿:2025年06月08日
遺言の「予備的条項」とは何か?

遺言書を作成する際に見逃されがちな「予備的条項」。これは、受遺者が遺言者より先に死亡していた場合に備えるための大切な記載です。予備的条項がないと、相続手続きが複雑化し、相続人全員での協議が必要になることもあります。一方で、すべての遺言に必須ではなく、状況に応じた判断が求められます。本記事では、予備的条項の意味と役割、ない場合の手続き、記載すべきかどうかの判断基準、さらに遺言の見直しについて、初心者にも分かりやすく解説します。

予備的条項とは何か

遺言書の中で、特定の財産を誰に渡すかを指定する場合、その受取人である「受遺者」が遺言者よりも先に亡くなることがあります。そうした不測の事態に備えて、あらかじめ次に財産を渡す相手を指定しておく条項を「予備的条項」といいます。

たとえば、「長男に土地を相続させる」と記載していた場合、長男が遺言者よりも先に亡くなっていたとすると、その土地の処分については遺言の効力が失われてしまいます。こうしたケースで「長男が先に死亡していた場合は、その子である孫に渡す」といった内容を予備的に記載しておくことで、遺言の意図を引き継いだ形でスムーズに相続を進めることが可能になります。 予備的条項は、特に年齢が近い兄弟や高齢の親族に財産を遺すような場合において、その人が先に亡くなる可能性も想定し、遺言の実効性を保つために重要な役割を果たします。

予備的条項がない場合の手続き

遺言書に予備的条項がない状態で、指定された受遺者が遺言者よりも先に亡くなっていた場合、その部分の遺言は効力を持たなくなります。このような状況では、遺言書に記載された通りの分配ができず、空白となった財産についての扱いが問題になります。

その結果、該当する財産をどう分けるかについて、相続人全員で話し合い、遺産分割協議を行う必要が出てきます。協議が円満に進めば良いのですが、相続人の間で意見が食い違えば、調停や訴訟といった法的手続きに発展する可能性もあります。これでは、遺言者が本来望んだ分配の意思が反映されず、相続の過程が大きく複雑化してしまいます。 特に、兄弟姉妹など高齢の親族に遺贈する場合には、その人が先に亡くなっているリスクが十分にあり得ます。こうした可能性を踏まえ、予備的条項が記載されていないと、残された家族に余計な負担がかかることになるのです。

予備的条項を記載すべきかの判断基準

予備的条項の記載は、すべての遺言書に必ず必要というわけではありません。実際には、どのような財産を誰に遺したいか、また、その人が先に亡くなってしまった場合にどうしたいかによって、記載の有無を判断するのが適切です。

たとえば、受遺者が遺言者と同年代の兄弟や年配の親族である場合、遺言者よりも先に亡くなる可能性は十分にあります。こうした場合には、第二順位として財産を受け取るべき人が明確にいるなら、予備的条項を設けておいた方が安心です。遺言の目的を確実に果たし、遺産の分配について余計な争いを防ぐ効果が期待できます。 一方で、特定の人以外に財産を渡したいという希望が特にない場合には、無理に予備的条項を記載する必要はありません。もし受遺者が先に亡くなっていたとしても、その財産は法定相続人の間で分割協議されることになります。このように、記載するかどうかは、自身の意志と家族構成、財産の内容に応じて柔軟に判断すればよいのです。

遺言の見直しも可能

予備的条項の記載に悩む場合、あらかじめ知っておきたいのが「遺言は後から見直しができる」という点です。一度作成した遺言書であっても、状況の変化や心境の変化に応じて、何度でも書き換えることが可能です。

たとえば、当初遺贈を予定していた受遺者が亡くなったり、疎遠になったりした場合には、改めて遺言を作成し直せば、遺言者の意思を常に最新の状態に保つことができます。また、予備的条項を入れるかどうか迷っている場合でも、将来的に考えが固まってから追加・修正するという選択もできます。

ただし、遺言を見直すには、遺言者自身に「意思能力」が備わっていることが前提です。つまり、内容を理解し、自分の判断で意思を表示できる状態でなければなりません。高齢や認知症の進行などにより意思能力が失われてしまうと、その後の変更は認められない可能性があります。そのため、必要な見直しはできるだけ早めに行うことが大切です。 このように、初めからすべてを完璧に決める必要はなく、状況に応じて柔軟に対応する姿勢が重要です。特に相続においては、時間の経過とともに家族構成や関係性が変わることが多いため、定期的な見直しを行うことで、意図した形で財産を残すことができるでしょう。

まとめ

遺言書を作成する際に見落とされがちな「予備的条項」ですが、受遺者が遺言者よりも先に亡くなるという事態は決して珍しいことではありません。そうした場合に備えて、予備的条項を設けておくことで、遺言の実効性を高め、相続手続きの混乱を避けることができます。

とはいえ、必ずしもすべての遺言書に予備的条項を記載しなければならないわけではありません。財産を託したい特定の人が明確にいない場合や、記載内容が複雑になることでかえって混乱を招くおそれがある場合は、無理に記載する必要はありません。

また、遺言は後から見直すことも可能であり、状況に応じて柔軟に対応することができます。ただし、そのためには遺言者に十分な意思能力があることが必要です。将来の変更が困難になる前に、自分の意思を確実に反映させる手続きを行っておくことが大切です。 予備的条項の有無については、想定される状況を踏まえて慎重に判断し、自分や家族にとって最も負担の少ない形を選ぶようにしましょう。

よくある質問

○予備的条項とは具体的にどんな内容を記載するのですか?
予備的条項には、受遺者が遺言者よりも先に死亡した場合の代替受遺者を指定します。たとえば「長男が先に死亡していた場合は、長男の子に相続させる」といった文言で、次の受遺者を明示するのが一般的です。

遺言はいつでも見直せますか?
遺言は何度でも見直すことができますが、その際には遺言者に意思能力が必要です。高齢などで判断力が低下する前に、状況の変化に応じて定期的に見直すことが望ましいです。

○受遺者が遺言者よりも先に死亡していた場合、その遺言は無効になりますか?
その部分については効力を失います。予備的条項がなければ、その財産は遺言の対象外となり、相続人全員で分割協議をする必要があります。

○予備的条項がないと、相続人はどう対応すればよいですか?
該当の財産については、相続人全員で協議を行い、遺産分割協議書を作成して対応します。意見がまとまらない場合には、家庭裁判所の調停などに進む可能性もあります。

○遺言書を作成する際、専門家に相談するべきですか?
遺言書は法的に有効であるために形式が定められており、予備的条項のような細かい内容も含めるには専門的な知識が求められます。弁護士や司法書士に相談することで、より確実で安心な遺言書を作成できます。

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Oさん(72歳) | 東京都三鷹市在住 | 女性

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