遺産相続物語

STORY

[疎遠な相続人]

第4回 亡妻が残した息子たちと築けたいい関係(後編)

  • 投稿:2025年06月14日
  • 更新:2025年06月18日
第4回 亡妻が残した息子たちと築けたいい関係(後編)

前編からの続き

亡妻の息子たちが望んだ対面

息子さんたち二人に送った中間報告書には、美和子さんの遺産預貯金2000万円を、法定相続分に従って、夫の和孝さんが2分の1の1000万円、浩一郎さん、洋二郎さんがそれぞれ4分の1ずつの各500万円で分割する旨を記しました。

報告書を送ると1週間もしないうちに浩一郎さんから連絡がありました。

「私たち兄弟はこの相続を希望します。ただ和孝さんに会ってご挨拶し、直接、私たちの考えを伝えたいんです。仲介していただけますか」

私はすぐに浩一郎さんの希望を和孝さんに伝え、私を含めた4人で直接会って、遺産分割協議を行うことになりました。

場所は都内のホテルのラウンジになりました。和孝さんと私が約束の時間より早めにラウンジに行くと、すでに二人は着席していました。

浩一郎さんはガタイが大きく、昔はちょっとやんちゃをしていたのかな、という雰囲気を醸し出しており、弟の洋二郎さんはまるでお兄ちゃんの子分のように付き従っていました。

そんな二人が和孝さんと私が到着すると立ち上がって、にこにこと迎えてくれたのです。そして浩一郎さんは、「今回は本当にお世話になり、ありがとうございます。母とは30年以上会っていなかったし、どこで暮らしているのかもわからなかったので、連絡をいただいたときは、俺たち兄弟、マジでうれしかったんです。生きている母には会えませんでしたが、母とのつながりがまたできた気がして」と一気に話し、そのあと二人は立ち上がって深々と和孝さんに頭を下げました。

ちょっとびっくりした様子の和孝さんでしたが、「藤川さんにお二人を探していただいて、本当によかったです。美和子さんも喜んでくれているでしょう」と優しく話されたのでした。

それから私が遺産相続の手続きの説明と、双方ともに法定相続分での遺産相続の意向を確認し、遺産分割協議はその場で成立したのでした。

事務的な話が終わると、和孝さんはそっとカバンから二人のへその緒と運動会の写真を取り出しました。

「美和子さんがこれを大事に箪笥の奥に保管していたんです。どれほどお二人に会いたかったか・・・・・・」

浩一郎さんも洋二郎さんもびっくりして顔を見合わせていましたが、すぐにうれしそうに運動会の写真を手に取り、和孝さんに美和子さんとの数少ない思い出話をはじめました。

その様子を見て、私は先にその場を離れました。

後日、和孝さんから連絡があり、「藤川さんが帰られた後、1時間くらい、彼らと美和子さんの思い出話で盛り上がりました。今度一緒にお墓参りすることになったんです」と話してくれました。

数週間後、預金解約、遺産分割手続きがすべて終わったことを和孝さんに報告しました。

「藤川さん、今回は本当にお世話になりました。この間、彼らと美和子さんのお墓参りに行ってきました。私の母も一緒に行ったんですが、孫ができたとすごく嬉しそうにしていて、美和子さんからの思いがけないプレゼントだねと、母と話していたんですよ」

このケースは、もし和孝さんが「亡妻の息子たちには一銭も相続させない」という方だったらぎくしゃくする可能性もありました。けれども、和孝さんの美和子さんへのお気持ち、息子さんたちのお母さんを思う気持ち、和孝さんへの感謝、すべてがいい形で化学反応して、本当にいい雰囲気で話を進めることができました。 いい相続のお手伝いができて、私もほのぼのとした温かな気持ちになれた案件でした。

終わり

第4回 亡妻が残した息子たちと築けたいい関係(後編)

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