遺産相続物語

STORY

[疎遠な相続人]

第5回 最期を看取ってくれたのは相続権のない親戚(中編)

  • 投稿:2025年07月12日
第5回  最期を看取ってくれたのは相続権のない親戚(中編)

前編からの続き

相続人を見つけ、連絡を取るまでに4カ月

やっと糸口を見つけることができました。さっそく私は、債権者である利害関係者からの申請という名目で戸籍を収集、相続人を確定し居場所を調査して、浩二さんの長男・長女に連絡を取るべく動き出しました。

ところが、ここからが大変でした。加山さんご夫妻は相続人でないため、本人確認資料はもちろんのこと、利害関係者であることを証明する医療費や電気代の領収書などを、その都度、申請書に添付しなければなりません。

まず加山さんご夫妻に立て替え金の明細を作成してもらうだけで1カ月近くを要しました。が、幸いにも洋子さんの連れ合いが、後々必要になるかもしれないからと、浩二さんのために立て替えた金額についてすべて記録し、領収書も残しておいてくれたこともあって、かなり詳細な明細を作成することができたのです。

加山さんご夫妻は浩二さんが亡くなったあとも、空き家となった家に2週間に1度は出向き、雨戸をあけて風を通し、郵便物の管理をしていました。

ご夫妻とは浩二さんの自宅でお会いして書類を直接受け取ることになったので、私は杉並に出向きました。家は古いながらも掃除が行き届き、お二人が丁寧に管理していることが伺えました。お二人ともとても温和で、好感の持てる方たちでした。

いただいた明細書からは、ご夫妻が週に1度、必ず浩二さんの病室を見舞い、浩二さんに頼まれた細々としたものを購入したり、家族として医師の説明を聞いたりと、献身的に面倒を見ていたことが伺えました。洋子さんは、「駐車場代や電車賃まで細かく立て替え費用を書き出しましたが、その方が真実っぽいかなと思って……」と遠慮がちにおっしゃられるので、「問題ありません。権利として明確にしておきましょう」と答えたものの、相続人の同意がないとこの債権は回収できないため、なんとももどかしい気持ちになりました。

一方、津田さんは、「私は葬儀費用の立て替え分だけを返してもらえればいいです。東京-岡山の新幹線費用やホテル代はいりませんから」と、「交通費や宿泊代も回収できるかもしれませんよ」という私の提案を退けられたのです。そして、「お見舞いに行ってお金を預かったとき、叔父から言われたんです。『お前には何も残せないけど、いろいろ助けてくれて本当にありがとう』って。私自身、叔父から何かもらうために面倒を見ていたわけではないですし、私も学生時代、叔父に世話になっていますから、お互い様ですよ」と話されました。 こうして書類も揃い、通常よりも煩雑な手続きを踏む必要はありましたが、なんとか浩二さんの長男・長女の居場所を見つけることができました。お二人とも岡山県在住であることがわかり、私はすぐにお二人に手紙を送ったのです。この時点で、浩二さんが亡くなってからすでに4カ月が経っていました。

後編に続く

第5回 最期を看取ってくれたのは相続権のない親戚(中編)

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