遺産相続物語

STORY

[個人の財産・会社の財産]

第9回 兄弟で築いた工場、家族の絆でつないだ相続――子のいない夫婦と、事業を受け継いだ甥たちの物語(後編)

  • 投稿:2025年11月09日
第9回 兄弟で築いた工場、家族の絆でつないだ相続――子のいない夫婦と、事業を受け継いだ甥たちの物語(後編)

前編からの続き

昭二郎さんが亡くなったので、あらためてご家族(妻の啓子さん、長男・圭太さん、次男・将太さん)の意向を確認しに自宅に伺ったところ、昭二郎さんの遺産整理業務もお願いしたいとのことで、こちらも受託することになりました。

正一郎さんの遺産相続について伺っていた昭二郎さんの希望を伝えたところ、ご家族はその意向にすべて同意されました。

そして圭太さん、将太さんは「会社が今後も安定して経営できる状態にしてほしいので、鈴子伯母さんが亡くなった後も、土地と建物に関しては確実に自分たちに権利が移るようにしてほしい」とあらためて強く希望されました。

「鈴子さんはお二人に確実に財産が残せるように、遺言書を作成するつもりです。だから『安心してほしい』とおっしゃっていましたよ」と伝えて、納得してもらいました。

こうして正一郎さん名義の会社の株式以外の財産(工場兼自宅の土地・建物の2分の1、預貯金)はすべて鈴子さんが相続する内容で、遺産分割協議がまとまりました。

私は、昭二郎さんが相続した60%の発行済み株式と昭二郎さんの持ち分40%の株式の名義変更に加え、鈴子さんの遺言書の作成もお手伝いし、佐藤家の遺産相続の手続きはすべて完了しました。

協議を進めるうちに戻った家族の交流

あれから7年後の2025年の夏、妹の和江さんが亡くなりました。私はまた佐藤家から連絡を受け、和江さんの遺産整理手続きもお手伝いすることになりました。

和江さんは生涯独身で、昭二郎さんの妻・啓子さんと二人の息子(圭太さん・将太さん)の家族がいろいろと面倒をみていたということです。

跡を継いだ佐藤工業所の経営は順調なようで、後継者のお二人は忙しくされていました。

私は施設に入っている鈴子さんにもお会いしました。鈴子さんは認知症を発症していましたが、7年前のことはうっすらと覚えていて、懐かしそうにされていました。

こうして和江さんの遺産整理を終えてまもなく、鈴江さんが誤嚥性肺炎を発症し、突然亡くなってしまいました。和江さんが亡くなって2カ月後のことでした。

鈴江さんの遺言を作成していた私は、遺言執行者として、不動産、預貯金の名義変更等の手続きを行いました。これにより、鈴子さん名義の工場兼自宅の不動産は、圭太さん、将太さんの二人の共有名義となりました。

無事に名義変更を終え、二人は本当にホッとした様子でした。

7年前に最初に佐藤家の遺産相続に関わったときは、兄弟仲が悪かったこともあり、とてもギクシャクした雰囲気のある家族でした。しかし、「会社を存続させる」という同じ目的に向かって、互いに協力し合ったことで、現在は当時の雰囲気はすっかりなくなっていました。

正一郎さん、昭二郎さん兄弟が築いた「佐藤工業所」を、今度は圭太さん、将太さん兄弟が引き継いでいくのです。

新たな家族の物語を紡ぐお手伝いができたことに、深い感慨を覚え、あらためて相続業務にやりがいを覚えた案件でした。

終わり

第9回 兄弟で築いた工場、家族の絆でつないだ相続――子のいない夫婦と、事業を受け継いだ甥たちの物語(後編)

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