はじまりは小さな相続案件だった
最初に取引先の金融機関の紹介で依頼されたのは預金900万円の遺産相続でした。
依頼者は大山和夫さん(五男)。金融機関の応接室でお会いして、兄・大山英三さん(享年82歳・三男)の遺産相続手続きを正式に受託しました。
「英三の遺産が900万円ほどあります。すべて預金です。兄は生涯独身で、子どももいないため、兄弟で分割することになると思うのですが、私たちは7人兄弟で、そのうち私を含め4人が存命です。亡くなった姉と二男の子どもがそれぞれ1人ずついますが、疎遠にしていて連絡先もわかりません。それと、実は私は長男の光男とちょっと仲たがいしていまして、連絡が取りづらいんです。そういうこともあり、遺産分割の手続き一切をお願いします」
一女六男と兄弟が多い、兄弟間で確執がある、代襲相続人となる甥っ子たちの居所がわからないという問題はあるものの、2~3カ月で終わる案件のはずでした。それが、最初の遺産分割手続きが終わらないうちに、次の相続が発生。その相続手続きも併せて受託することなり、最初の手続きと並行して進めているうちに、さらにご兄弟が亡くなり……と、1年強の間に立て続けに5人の兄弟が亡くなってしまったのです。
英三さんの相続手続き受託後すぐに戸籍等を取り寄せ、ほどなく甥二人の居所は判明しました。そこで相続人らに連絡を取ろうとしていた矢先、和夫さんから「弟が亡くなりましたので、こちらの遺産相続の手続きもお願いしたい」という連絡が入りました。英三さんが亡くなって4カ月も経っていませんでした。
さらに亡くなった弟の弘さん(享年72歳・六男)の相続手続きも受託し、英三さんの遺産分割手続きと並行して、弘さんの財産調査を進めることにしたのです。
弘さんも生涯独身で、子どももいなかったので、英三さん、弘さんの相続人は同じでした。そのため相続人への連絡は弘さんの財産調査を終えてから、2件一緒に行いました。
まず和夫さんと確執のある長男・光男さんには手紙を送り、英三さん、弘さんの遺産相続が発生したことを連絡しました。すると今度は、光男さんの妻・京子さんから「夫は先日亡くなりましたので、英三さんと弘さんの遺産については、私と息子2人で継承します」という電話が入ったのです。
念のために光男さんの戸籍を取り寄せたところ、弘さんが亡くなってからひと月も経たないうちに、確かに光男さんが亡くなっていたことが判明したのです。
さらなる相続の発生と複雑な家族関係
最初の英三さんの相続(預金900万円)、そして弘さんの相続(預金2200万円)の遺産分割は、兄弟である四男・俊夫さん、五男・和夫さん、代襲相続として長女の息子、次男の息子、そして長男の権利義務を引き継いだ妻・京子さんと息子2人、の計7人で法定相続分を相続するということで遺産分割協議書の作成手続きに入りました。
ここで大山家のことを少しお話します。一女六男の大山家は、長女、長男、次男、五男(依頼者の和夫さん)は結婚して子どもがいますが、三男(英三さん)、四男(俊夫さん)、六男(弘さん)は生涯独身で、五男・和夫さんの家族と一緒に両親が残した家で一緒に生活しています。両親が残した家の名義は四男・俊夫さんで、お母さんから相続しました。その後、俊夫さんは両親が残した家を建て替え、独身だった他の兄弟(英三さん、弘さん)、そして和夫さん家族と一緒に住んでいました。
ところが五年前、俊夫さんが脳梗塞で倒れます。以来、長期にわたる入院生活を送っていて、入院生活と身の回りの世話は、すべて和夫さんの妻・静香さんが担っています。
実は、長男である光男さんと和夫さんの仲たがいは、実家の相続が原因でした。
光男さんは俊夫さんが実家を相続することに反対だったのですが、亡くなったお母様の遺言だったため、仕方なく受け入れたという経緯がありました。それ以後、光男さんは和夫さんたち兄弟と連絡を絶ってしまいました。 こうした事情を和夫さんから聞いた私は、これ以上もめないよう、慎重に遺産分割手続きを進めていきました。ところがその矢先、また新たな相続が発生したのです。